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映画『名探偵コナン 絶海の探偵』感想

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2013年公開の劇場版名探偵コナンシリーズの17作目。

舞台は洋上、海上自衛隊イージス艦にて繰り広げられるスパイ陰謀もの。

海自イージス艦「ほたか」の体験航海の参加者に「あの国」からの工作員X(エックス)」が紛れ込み「ほたか」内に潜入する。

その事を察知していた海自情報部も女性諜報員の藤井を秘密裏に「ほたか」に潜り込ませる。

「ほたか」の機密は奪われてしまうのか、日本と「あの国」は戦争になってしまうのかーー

 

 

 

「コナン」らしからぬ軍事サスペンス映画で、まるでかわぐちかいじ福井晴敏が原作なんじゃと見紛うほどの「海洋・軍艦」映画であります。
(ちなみに「あの国」という言い方は劇中表現そのままです。。そう言えば福井晴敏原作の映画『亡国のイージス』でも「あの国」という表現で一貫してましたな。。原作小説ではモロに国名を出してるけど。。理由は推して知るべし、、詳しくはwikipediaでも知恵袋でも見てください。。)

 

 

上記の「コナンらしからぬ」という表現は正確には言葉足らず、もしくはシリーズを中途半端にしか知らない人のイメージかもしれません。

というのも劇場版の名探偵コナンのシリーズは、子供と一緒に劇場に足を運んでくれる親御さんのためにも、大人が見ても楽しめるように作っているみたいなので。
これは劇場版のクレヨンしんちゃんなんかもそうらしいです。
クレヨンしんちゃんがアニメ化する以前の原作コミックスの1巻なんてモロに大人向けだろ!!ってツッコミは置いといて)

 

 

特に『絶海の探偵』はその極北……大人向けすぎて子供は置いてけぼりな気もします。。
まぁシリーズでお馴染みのコナンのスケボーアクションにサッカーアクションに、ヒロインの蘭ちゃんの空手アクションに加えて、これもお約束であるコナン(というより新一)と蘭の恋愛要素など、子供も楽しめる要素もありますが。
でも本作の主題はあくまで最初に書いたスパイ陰謀要素がメインであって、中盤なんて特に小難しいダイアログが延々と続くので、映画館の中で子供が寝ちゃうかも……

これは自衛隊が出てくる昔の怪獣映画とかのあるあるですね。

ですので「大人も楽しめる映画」というより「子供も楽しめる映画」と言った方が的を射ているかもしれません。。

 

 

こんな難解な映画にして肝心の動員と興行収入は大丈夫なの?

……って心配は制作側にも当然あったかと思われますが、なんとこの『絶海の探偵』は17作続いた劇場版コナンシリーズの興行収入記録を更新しトップとなります。(当時)
そしてこの「軍事・スパイサスペンス路線」は次作の『ルパンvsコナン』とその次の『異次元の狙撃手』まで3作続く事となります。

さらにさらにこの『絶海の探偵』より2019年公開の最新作『紺青の拳』まで、劇場版コナンシリーズは興行収入を右肩上がりに更新し続ける驀進撃が始まります。
2018年公開の『ゼロの執行人』では、人気キャラの安室透をメインキャラに据えて大人ファンの心をガッチリ掴み(というか大人のお姉さま?)、興行出撃が90億円を超えたなんてニュースも記憶に新しいですが、大ヒット街道はその5年ほど前の『絶海の探偵』ころより始まっていたんですね。
2016年公開の純黒の悪夢ではその安室透と彼のライバルである赤井秀一の熱いバトルが見れます。
私なんかはこの二人からは中の人的にコナンよりさらに古いガンダムを連想しちゃいますが笑

 

 

この約10年に及ぶ右肩上がりのバブリーな興行成績のせいなのか、劇場版のコナンは特に最近のやつほど大作感が出てる気がしますが……これは気のせいではないようです。
映画が面白いから、結果を残してるから、次回作、次々回作でも多くの予算が出るのは当然ですが、シリーズが20年以上も続き、コナンを子供の頃に見ていた世代が既に親になっている事も理由みたいです。
親になった世代が子供と一緒に映画館に来る。
これだけで動員客数は単純に2倍、3倍になるし、子供も大人も楽しめる映画ならまた来年も見に来るというループが起こる……というのが資金循環のカラクリのようです。

 

 

それと登場人物が歳を取らない、いわゆる「サザエさん時空」な事もシリーズの強みだと思います。
進歩する現実世界のツールや時事ネタを作品に取り込めますし。
それはスマホだったりSNSだったりサイバーテロやネット犯罪だったりね。(サイバーって死語かな?)
そういえばコナンと同じくミステリ漫画の先駆けである金田一少年シリーズの続編で、最近始まった金田一37歳の事件簿』でも、「タワーマンション殺人」や「リベンジポルノ」と言ったいかにも現代っぽいテーマを扱ってますね。
こちらは掲載誌が少年マガジンからイブニングに移るとともに、主人公の年齢がしっかりと20歳も上がってますが。。

(同じくイブニングでやってる島耕作の手法ですね。。)

 

 

2000年公開の『瞳の中の暗殺者』では、警官殺しの事件が世間に知れ渡る様子が、むか〜しの昭和の刑事ドラマのように、巨大な輪転機で新聞がグルグルシャカシャカ刷られていく画をバックに「警官殺害される」の新聞の活字見出しが画面に踊る……といった演出が採られていました。

ですが2014年公開の『異次元の狙撃手』では、事件が世間に浸透していく様子を、一般人の5chの書き込みや、TwitterやLINEのやり取りを画面に映すという……なんとも現代風のネット的なオンライン的なウェブ的な演出に置き換わってましたしね。

この間たった14年なのに隔世の感を禁じえないのは私だけですかね……?

 ただ2017年公開のアガサ・クリスティ原作のミステリ映画『ねじれた家』では殺人事件が世間に知れ渡る様子が上記の「輪転機で新聞がグルグルシャカシャカ」でしたが。。

これは映画公開は2017年ですが、作中の時代設定がクリスティの生きた時代の1950年前後なので、つまり時代再現であると同時に演出方法の回帰、郷愁でもあるのですね。

 

 

また映画版1作目の時計仕掛けの摩天楼と13作目の『漆黒の追跡者』では「摩天楼」のタイトルの通り東京タワーがフィーチャーされていましたが、18作目の『異次元の狙撃手』東京スカイツリーが舞台でしたし。
(コナンが始まった頃にスカイツリーはない)
↑こんな注釈、わざわざ書く事もないと思われるかもしれませんが、これからコナンを見る未来のファンにはトリビアになるのかもしれませんね。
その内「蝶ネクタイ型変声機」ぐらいなら現実化したりして。(むしろ時代遅れになったりして)

 

 

話を『絶海の探偵』に戻します。
本作は海上自衛隊の全面協力の元で作られたらしいですが、前述の福井晴敏原作映画しかり、シン・ゴジラしかり、平成ガメラ3部作しかり、劇場版パトレイバーしかり、やっぱり自衛隊が出てくる映画なんだから自衛隊が制作に協力した映画の方が面白いです。
むか〜しの昭和の怪獣映画に出てくる自衛隊の戦車部隊のように怪獣に早々にやられる「ヤラレ役」ではなくて、『絶海の探偵』では海上自衛隊の方々がちゃんと活躍しています。
海自と海保の隊員の一人一人が国と国民を守る信念を持って任務に就いている事がしっかりと描かれています。
加えて映画の舞台となっているイージス艦そのものが、ストーリーのガジェットとして、また「イージス艦」の名の通り人命救助のためにその本懐を果たしています。
映画のラストで、海に漂流した蘭を捜索するシーンがあるのですが、そこでこの最新鋭のイージス艦「ほたか」のレーダーが活躍します。
これってミステリの原則で有名な「ノックスの十戒」や「ヴァン・ダインの二十則」をちゃんと踏襲してるんですよね。
人間の捜索という問題の解決に、ちゃんと作中で事前に提示されていた「ほたか」のレーダーサイトが使われるという伏線回収、この辺の作りのキメ細やかなには舌を巻きました。

 

 

かような自衛隊が協力した映画で、最もリアルで生々しく(色んな意味で)描写されていて、かつ先駆でもあるのは、恐らく機動警察パトレイバー2 the Movieでしょうか?

主人公たちは自衛隊員ではなく警察官ですが。

この自衛隊と警察の違いというのも人命救助や国防に関する緊急時の権限の違いでもあります。

この映画に至ってはそういったテロや国防といったテーマを描きたい押井守監督のメッセージというかエゴみたいなものが全面に押し出されていて、レギュラーキャラクターや主題となってるロボットの「レイバー」までもがほとんで「オマケ」扱いになってますし。。

実はこのジレンマは『絶海の探偵』も同じで、メインプロットに関係のないレギュラーキャラクターのアガサ博士や少年探偵団がどうも持て余し気味。。

上の面々が画面に映るとどうも緊張感がユルむんですよね。。

コナンは児童向けで、パトレイバーはミドルティーン以上向けという違いはありますが、どちらもコミック版とテレビ版に対して、劇場版はその対象年齢を遥かに突き上げてる点は共通してます笑

 

 

逆に原作キャラクターの特徴を巧く取り入れている映画もあって、2010年公開の天空の難破船です。

飛行船という巨大な空の密室に、怪盗キッドがトレードマークであるハンググライダーで颯爽と盗みに現れ、ハンググライダーで颯爽と去るーーというストーリーです。。

この飛行船とハンググライダーのビジュアル的な相性の良さは……まぁ映画を見てもらうのが早いですね笑

アクションシーンでは、飛行船上(文字通り飛行船の「上」です)でコナンが犯人とバトルして、ラピュタ、及び一連の宮崎アニメばりに落っこちそうになり、実際に落っこちたりした所を、颯爽とハンググライダーで現れたキッドが助けたりして。

飛行船の内側という狭苦しい画ばっかりを映すのではなく、キッドがハンググライダーで空を舞うシーンは爽快で絵的なカンフル剤にもなってます。

 

 

自衛隊の話に戻りますが、要は自衛隊を出すなら自衛隊をヤラレ役や背景、説明役として出すのではなくて、しっかりと調べ協力を得た上で、真摯に描くことが映画が面白くなる事なんだと。

 

 

上に挙げた映画は、決して新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生の戦自(戦略自衛隊の略、架空の組織)のようにナイフや自動小銃やナパームや火炎放射器で非武装の人間を大量に殺した挙句に、エヴァ弐号機に無双されるような悪役&ヤラレ役には描かれていません。(当たり前です!)

 

あ、いやアレは喩えとして極論すぎますね。すみません。

アレは昔の怪獣映画のヤラレ役の自衛隊ではなくて、前述したガンダムの監督の富野由悠季の作品の伝説巨人イデオンの虐殺シーンのオマージュでしょうから。。
というかエヴァの監督は前記した『シン・ゴジラと同じ庵野秀明ですしね。。
そっちでは自衛隊をちゃんとかっこよく撮ってますから。

 

 

話がとっ散らかってきたのでこの辺で締めます。。

 

 

 

 

長々とコナン映画について語ってきましたが、なんで現在公開でもない映画の話をしていますかというと、実は今回の記事は以前にポストした記事で予告していた続きだったりしますね。。

コナン映画について語ると言いながら、2ヶ月も空いてしまって大変に恐縮ではありますが。。

ですがこれだけ語ったのに、実は一番語りたいメインの一本についてはまだ触れてなかったりします。。

それは上でもちょっと触れている、劇場版コナンがサイバーネタを題材にしたという映画なのですが……この二つは一見親和性がなさそうに見えますが……さに非ず。

実は筆者的にはその作品がコナン映画で一番好きな一本だったりしますね。

そんなわけでその作品についての記事は明日の更新に続きます。