ユニット折り紙の部屋*ポリコラルウィールス

ユニット折り紙の事をつらつら綴り

『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』&『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』

天才少年ヒロキはVRゲーム「コクーン」を完成させるがその直後に自ら命を絶つ。「コクーン」の披露会ではヒロキの父が殺害され、コナン達、少年探偵団は事件の手掛かりを得るため「コクーン」の中に潜り、切り裂き魔「ジャック・ザ・リッパー」が徘徊する19世紀末のロンドンへと向かう。

 

 

 


前回の記事の続きです。
前回も言いましたが、名探偵コナンを知っていて、この映画を見たことがなくて、それで上のあらすじだけ読むと???って思われるかもしれませんが、コナンシリーズのストーリーで間違いありません。。
時代ごとにタイトルごとに、テーマを変えて流行を取り込めるのがコナン劇場版の強みとも書きました。
例えば劇場版コナンシリーズの1作目、1997年公開の時計仕掛けの摩天楼の「電車が60km/h以下で走ると爆発する」というネタは、1994年公開の映画『スピード』が下敷きになってますしね。
では2002年公開の『ベイカー街の亡霊』が取り入れた流行は何かというと、やはり1999年公開のマトリックスでしょうか。
前々回でも触れていますが、『マトリックス』のヒットによって仮想世界モノが流行り、また「コクーン」という体感型VRゲームも同じく前々回に言った『トータルリコール』に出てくるコクピットのような形をしています。

 

 

 


ここまでの説明だと映画のフンイキはなんだかサイバー(死語かなこれ)な印象ですが、VRマシンによってコナン達一向が19世紀末のロンドンに飛ぶと一転、切り裂きジャックが彷徨い歩く夜霧が立ち込めるベイカー街へと舞台は変わります。

 

 

 


ジャック・ザ・リッパー切り裂きジャック)」は19世紀末のロンドンに実在した猟奇犯罪者ですが、映画にはVRゲームの仮想世界の中でその切り裂きジャックが登場します。

タイトルの『ベイカー街の亡霊』とはこの切り裂きジャックの事を指してるのですね。

(ちなみに名探偵コナンの舞台である「米花町」とはこの「ベイカー街」をもじっものです)

 

 


だがそれのみならず、、、
19世紀末のロンドンと言えば「コナン」の元ネタでもあるコナン・ドイル作のシャーロック・ホームズ!!

ーーという事で、なんとこの映画にはかのシャーロック・ホームズが出てきます。

 


それどころかホームズシリーズに登場するワトスンやハドスン夫人アイリーン・アドラーが登場し、敵役としてモラン大佐やモリアーティー教授まで出てきます。

 

 

 

 

この現実のロンドンと創作のロンドンが混ざった世界感は、「仮想世界を体感できるゲーム」という設定を、上手に惜しみなく余す事なくフルにコナンの空気に組み込んでいると思いました。
コナンにマトリックスとかの設定をただくっ付けて二番煎じになる事なく、ちゃんと乗算効果が得られる科学反応を起こしていました。

 

 

 

 

金田一少年の事件簿には金田一耕助は出ない、
名探偵コナンにはシャーロック・ホームズは出ない、
というような不文律がありますが、この映画はそんな不文律を破った作品です。

ルパン三世の原作漫画には一世、二世、さらに明智小五郎とか出てきますが……)

そう、この映画には江戸川コナンこと工藤新一が敬愛するシャーロック・ホームズが登場するのです。
この行為は人によって英断とも暴挙とも映ると思います。
そういったタブーに踏み込むからにはネタ元には敬意を払わなければいけませんが、この『ベイカー街の亡霊』はとても出来が良く面白い映画という意味で、最大限のリスペクトを示してると感じました。

 

 

 

 

ここで一つエクスキューズしておく事があります。。

さっきからホームズが出る出ると言っていますが、実はこの言い方は正確ではないのですよね……

 

 

シャーロック・ホームズ」と言われたら、どういう姿を想像するでしょうか?

多くの人は恐らく「ハンチング帽を被りケープ付きの外套を羽織ってパイプを咥えている」姿のホームズが浮かぶと思います。

でも実はこれって舞台や映画によって固められていった言わば後世のホームズ像であって、原作の小説(正典と呼ばれる)ではドイルはホームズの装いについてほとんど言及してないんですよね。

名探偵コナンのマンガの1巻の表紙でもコナンがそういうコスプレしてますし、アニメ『氷菓』のエンディングでもヒロインのえるがそういうコスプレしてますが、アレらは単にそういう恰好なだけであって厳密にはホームズのコスプレとは言えない事になります。

(ちなみに主役のホータローもルパンのコスプレをしていますが、ホータローも原作の氷菓ではどういう外見か描写されていません。アニメの創作という事になりますね)

ですので『ベイカー街の亡霊』にチラッとだけ出てくるホームズも正確にはホームズとは呼べない……という事になるのですが、そこに触れたらヤボですので。。

むしろ穿った見方をすると、ホームズの外見は謎であるからこそ、映画に出てきたホームズらしき人は、ホームズかもしれないとも取れるし、違うかもしれないとも取れるわけですしね……

 

 

実はこの「コナン・ドイルじゃない作家が著作にホームズを出す」というネタには元祖があります。
それは怪盗小説『アルセーヌ・ルパンシリーズ』の作者、モーリス・ルブランが書いた『ルパン対ホームズ』です。
タイトルの通り、フランスを代表する大怪盗ルパンと、イギリスを代表する名探偵ホームズの二大スター夢の共演、対決小説です。。
……が、この『ルパン対ホームズ』は、ルブランはドイルに無許可で書いたものらしいです。。
これについて、先に書いたリスペクトがあったのか否かは、私などが立ち入れるような領域ではありませんが……『ルパン対ホームズ』から100年経った今だからこそ気軽に話せる故事ではありますね……

 

 

『全ては主観性を失って、歴史的遠近法の彼方で古典になっていく……時効ってことさ』


氷菓の主役のホータローのセリフです。

 

 

 


そして……そのシャーロック・ホームズリスペクトから生まれたコナンと、アルセーヌ・ルパンの孫であるルパン3世が夢の共演、対決する映画が、表題のもう一つの作品ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIEであります。

 

 

 


……なんで今こんな話をしているかというと、実は明日の夜9時から日テレの金曜ロードショーでそのルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIEが放送されるからなんですよね。
前回からコナン映画を長々と話してきたのは今週『ルパンVSコナン』がある事を知って、そう言えば前のブログでコナン映画を語りたいと言ったのを思い出したからなんです。。
この映画のレビューについては放送前のネタバレになるんで今はやめときます。。